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●願いごとふたつ |
流れ星見つけた。
「ちゃん、願いごとせなせな!」
「え、あ、えっと!」
――クリスくんと一緒にいられますように
――クリスくんの願いが叶いますように
(どっち?)
「流れてしもた〜、早いなあ。ちゃん、ちゃんとお願いごとできた?」
心底残念そうに、消えてしまうスピードを嘆きつつしょぼしょぼとクリスくんが聞いてくる。
わたしはあははと若干乾いた笑いを返しながら、正直に告白。
「あのね、願いごとが多すぎて駄目だった」
すると一瞬まん丸な目にして、すぐ柔らかく細める。
「欲張りさんやなぁ。せやけどボクもおんなじやった。こっちのお願いごとと、あっちのお願いごとどっちしよ〜思っとったら、あっというまにお星サン行ってもうたわ」
「あはは」
「お星サンも、欲張りさんのところからはすぐ逃げてしまうもんやのかもしれへんねえ」
苦笑いしながら二人で夜空を見上げる。白い星きらきら。
あの位置だったら、世界中のどこまででも見渡せるんだろうな――
「ちゃんの願いごとってどんなん?」
「んー、内緒!」
「イケズやわぁ」
「そういうクリスくんは?」
「ボク? ボクは……」
クリスくんが言いよどんだことを不思議に思い、彼を見れば色素の薄い肌を同じくらい色素の薄い髪がさらさらと縁取っている。
その中で唯一濃い色彩を放つ眼差しをゆらりと一瞬だけ揺らして、さっきよりも困った顔でわたしに笑いかけた。
「あんなあ、好きなコとずっと一緒にいられますようにーって言うんと、お父ちゃんの仕事をうまく手伝えますようにーって」
「一緒に願っちゃえば良かったのに」
「アカンねん。片方叶うと、片方が叶わへんくなってしまうんよ。せやって、どっちお願いしよー悩んどったら、お星サマが行ってもうたんや」
伺うように、見つめる目にどきどきが止まらない。なんで、そんな目でわたしのこと見るの?
視線が彷徨うのを見られたくなくて、もう一度空を見上げた。もう、流れ星はどこにも見えない。
結局、願いごとをかなえるためには頑張るしかなくて。
「ちゃん? ――、え?」
空を見上げたまま勘で探り当てたクリスくんの手の、小指をそっと握る。赤ちゃんがそうするみたいに。
手を全部ぎゅってする勇気は持てないから、何するんやって言われても、冗談だよって返せるくらいの距離。
女の子みたいにきれいなクリスくんの手は、だけどやっぱり男の子のそれ以外の何物でもなくて、自分でしたことながらどきどきする。
「小指だけでええの?」
え、と、顔をあげた先に、息が止まりそうな笑顔。
我に返ったときにはわたしの手は逆にクリスくんの手に包まれていて、本当はそうしたかった状態でつながれていた。
「ボクは足りひんから、ぎゅーってする」
ちゃん手ぇちっちゃいなあ。
これ以上ぎゅってしたら、壊れてしまいそうや。
心底感心したように言うクリスくんがおかしくて笑う。笑ったわたしを見て彼も笑う。
まるで小学生のカップルのように、繋いだ手をぶんぶん振りながら歩き出した。
きらきらお星さま。空から見てる。
衛星みたいに、あの星を中継して日本とイギリスで気持ちを伝えられたらいいのにな。
(せめて繋いだ手から、この気持ちがあったかいものになってクリスくんに届きますように――)
次に星が流れたら、それをお願いしようと思った。
Fin
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Comment:
絶賛クリス主祭続行ちゅ(略
クリス主を書くと、星とかきらきらがすぐ話に絡んできます。
私にとってのクリスがそんなイメージなのかも。
up日不明
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