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●拍手再掲 |
一緒だと思ってた。
ずっと三人、手をつないで。横に並んで。
右を向けば将臣君。左を向いたら譲君。たまに、私の頭上を越えて二人で会話して、そのしっぽを捕まえて私も混ざって。そうやってずっとずっと。
「どうして……」
こうなっちゃんだろうねって言おうとして、だけど言ったところで同じ言葉しか返ってこないだろうから、言葉の半分を私は飲み込む。だけどそんなの、結局は言っちゃったのと同じことで、将臣君は私を抱きしめる腕の力をこめることで返事の代わりにした。
もし、あの時手をもっとのばしていたら。
もし、3人揃って同じ時空にたどり着けていたら。
「……まあ、考えたって仕方ねえよな」
諦めにも似た苦笑を零して将臣君がそう呟く。今度は私が将臣君の背中に回した腕に力をこめて、相槌を打った。
夜の闇は温度の低下と共にその色を濃くしていく。それに反比例するように紺碧の闇に散らばる星々は輝きを増し、それは今を諦めれば諦めるほど、輝いて見える昔の私たちのように見えてなんだか切なかった。
「お互い、譲れねえものを持っちまったんだ。あとは、それぞれが信じて進むしかねえ。だろ?」
納得は出来ても、頷くことなんて出来ない。
だって、だってさ。
私にとって、一緒にすごしてきた17年間だって、譲れないものなんだよ。
冷たい鎧越しに互いの体温が溶け合って、ふと小さい頃の昼寝を思い出す。いつからか、互いの性別を意識してしなくなったそれに似た感覚は、泣きたいくらいの切なさで思い出されて私は慌てて目を閉じる。
当たり前過ぎて気付かなかったもの。気付けなかったもの。
どうしてそれが、こんなにも大切なものでなくちゃいけなかったんだろう。
(だけど)
互いに、自分の事以上にわかる、相手のことだから。
何度時空を超えても、違う筋書きに進めたとしても。
この『心』は変わらない。
白み始めた空が明るさを増す度に、腕の強さは同じように増して。
泣かないように、噛み続けた唇から鉄の味が口の中に広がる。だけど、そんなことは絶対に気付かせない。
零した呼吸から泣きそうな自分がバレそうで息だって上手く出来ない。鼻が詰まってきたのだって、明け方の冷え込んだ空気のせいにしてみせる。
じゃあな、と告げた顔が、見覚えのあるそれから私の知らない3年間に作られたものへと変わって。すう、と冷えた心の内側に助けられて、私も神子に戻る。
どうせなら。
「もっと昔に……戻れたら良かったのにね」
背中さえ消えてしまった空間に呟いて。
今更、凝った涙が零れて落ちた。
Fin
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Comment:
拍手再掲。
どんなに考えても考えても、幼馴染だった時間を上書きできるほどの思い、というのが理解できず。
本編を掘り下げられるのはまだまだ先のようです……。将望好きなのにー!
20061216up
*Back*
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