** Happy C×2 **
 ●今はまだ

 その事件が起きたのは、昼の巡察に原田率いる十番組が出かけたあとだった。
 いつもならば千鶴もついていくのだが、今日に限って別の用事を土方から言いつけられ、島田の護衛と共に町へ出た。
 自分が外に出ることで、余計な人手が新選組にかかってしまうことは心苦しいが、最小限とは言え、気遣って用事を言いつけてくれるあたり、土方は面倒見が良いと思う。
 組の為に最善を、とは本心だろうが、徹しきれずについ千鶴にまで甘さを見せてくれるあたりが土方自身も苛立たしいのだろう。それがあの、眉間の皺になっているような気がする。
 鬼の副長、の二つ名は確かに彼を良く表しているけれど、それだけじゃこんなにも人は着いてこない。
 そしてその滅多に見せない優しさを自分にまで見せてくれることが、千鶴はたまらなく嬉しかった。
 無事に用事を済ませて屯所に戻り、島田に礼を言って別れる。島田は体型に似ず、細やかな気使いをしてくれる人物で、彼の隣はとても居心地がよかった。
「土方さん、雪村です」
「おう、入れ」
 襖越しに声をかけ、許可を貰ってからす、っと右に引く。そういった細かい所作に女ってのが見えるんだよな、と土方は思ったがあえて口にはしない。
「お使い、行って参りました」
「ご苦労だったな。悪ぃな、こんな雑用頼んじまって」
「いいえ。お役に立てたのなら嬉しいです。又何かあったら言ってくださいね」
 忙しい土方の邪魔にならぬよう、最低限の会話だけで部屋を後にする。空を見ればまだ日は高い。もうすぐ原田たちも戻ってくるだろうが、その前にざっと中庭の掃き掃除でもしておこうかと、千鶴は足を運んだ。
「あ」
 いつもならば人気のあまりないそこに、所属する組まではわからぬが数名の隊士が剣の稽古をしていた。確かに最近屯所が手狭になっているという話は聞いていたが、まさかこんなところでまで稽古に使うとは思わなかった千鶴は、驚きの声をあげてしまう。
 剣を振るっていた隊士達は一様に千鶴を見、眉をひそめる。他の隊士とは違う形(なり)に怪訝そうな顔をし、やがて思い当たったのか「ああ」と零した。
「あんたか。土方副長の小姓ってのは」
 一瞬反応が遅れたが、そういえばそんな話もあったかと平静を装って曖昧な笑みを返した。その話がどこまで本当の事として流れているかわからない以上、はっきりとした返事をするのは良くない気がしたのだ。
 別の男が千鶴の方へ歩み寄り、品定めをするように上から下までじいと見やる。やがて鼻白んだ笑いを零した。
「ずいぶんひょろっこい男だな。女童と言ってもいいくらいじゃないか」
「お主、そんな細腕で副長のお世話が出来ているのか? 腰には立派なものを提げているようだが、まさか飾りじゃないだろうな」
 あまり苛めてやるな、と、別の男が庇うつもりのない言葉を発したのをきっかけに場が笑いに包まれる。無論嘲笑と呼ばれる類だ。
 千鶴は最初こそきょとんとしたが、徐々に向けられる悪意に腹を据えかね、けれど立場上揉め事は不味いと必死で自制する。
 だが男達はその態度自体を腰抜けと評し、さらに悪意に満ちた笑い方をした。やがて1人の男が千鶴に歩み寄り、先ほどまで剣を握っていた手で千鶴の右腕を掴むと、中庭へと半ば強引に引き摺り下ろす。
「わ……っ!」
 辛うじて女子のような悲鳴を上げることだけは避け、転ばぬように庭へと降りる。何をするのかと睨みつければ、今更といわんばかりの蔑んだ眼差しが返された。
「腕も細いな。まるで本当に女子のようではないか」
 事実女なのだから仕方ない。が、それをここでばらすつもりは髪の一筋ほどもない。
 掴まれた腕を解こうと抵抗するが、所詮は非力な身だ。ぴくりとも動かず、逆にそれが男達を楽しませる結果となった。
「よし、稽古をつけてやろう。感謝しろよ小僧。幕府を、民草を守る為の力をおまえのために使ってやろうと言うのだ」
「な……っ!」
「おおそれは妙案だな。良かったなお前。土方副長の為にも腕を磨いておかねばならんだろう」
「俺の木刀を貸してやる。何、そいつとていきなり全力では打ち込まんから安心しろ」
 反論する間もなく男が木刀を構え、別の男が千鶴の足元へ己のそれを投げ転がす。何を勝手に、と反論したいが、こうなっては何を言っても無駄だろう。
 幾ら護身術を習っていた、とは言っても、正面から戦って男の力に勝てるわけがない。しかも、相手はこの新選組に在を置くものだ。
「なんだ、構え方も知らんのか?」
「小姓と言っても目的は色々だからなあ」
 卑下た笑いを浮かべる男に、どうしようもなく嫌悪感が募る。ああもう、なんでこんなことになってしまったのだろう。
 仕方なく千鶴は足元の木刀を取り、中段に構えた。せめて避けるなり流すなりしなければ、怪我は必至。その場合、自分の怪我がどうということよりも、屯所内での争いを起こしてしまったという事実が心苦しい。これ以上、あの人たちに迷惑はかけたくなかった。
 観衆となった男が、構えた千鶴を生意気とばかりに睨みつける。
「大体、俺らが狭っ苦しい部屋で雑魚寝だというのに、お前のようなものの役にも立たぬものが部屋をあてがわれているなど到底納得出来ん」
「どうだ。額をこすりつけて謝罪し、自ら部屋を返すというのなら考えてやらんことはないぞ」
 ああ、そういうことか。
 どうりで最初から視線が好意的ではないと思っていた。だがしかし言い方が気に入らない。やり口も気に入らない。
(誰がそんなことするもんか)
 ぎり、と相手を睨みつけると、てっきり泣き出すだろうと思っていた隊士たちの気配が一瞬怯む。
「稽古を、つけてくださるのではないのですか」
 これは私闘でも嫌がらせでもない。純粋な稽古付けだと。
 だから謝る必要など、ない――!
「……生意気な目をする」
 千鶴の右へと移動する男にあわせ、千鶴が左に同じだけ移動する。草履すら履いていない足袋が、じゃり、と砂を食む音がする。この時点で千鶴の方が踏み込みの点で不利だ。
「てやあああああああ!」
 上段から繰り出された一撃を受ける事無くかわし、横に流れた剣を脇から押しやると同時に生まれる反動を使って距離を取り直す。
 相手が一瞬体勢を崩したが、そこを追い詰めるつもりはない。仮に相手を打ち負かすことが出来ても、さらに激昂した残りの男らが自分に向かってくるだけだ。
(じゃあ、どうしたらいいの?)
 一瞬生まれた迷いが場の結論を導き出した。まさか避けられると思っていなかった男が、怒号と共に横殴りの剣を振るう。咄嗟に立てた剣で胴を薙ぎられるのだけは避けたが、最早痺れとも言えぬほどに強い衝撃が両の腕を襲った。
「くっ……!」
 それでもなお剣を取り落とさぬ千鶴に、男の木刀が鈍い音を立てて降ろされる。反射的に同方向に力を逃がすことで骨が折れることこそ防げたようだが、激しい痛みに耐え切れず千鶴は持っていた木刀を取り落とした。
「あう……っ!!」
 がらん、という音と共に木刀が庭に転がる。千鶴は打ち付けられた左手首を逆の手で押さえ、それ以上声を上げることを必死で自制する。そんな千鶴に追い討ちをかけるように男の振り上げた木刀が千鶴の肩へと迫った。
 その時。
「何をやってやがる!」
 張りのある声が場に満ちる。我を忘れていた隊士をたった一言で我に返らせる程の殺気のこもったそれ。
「はっ、原田組長!」
 時間が過ぎても収まることのない痛みに顔をゆがめながら、千鶴は男が顔を向けた方を見る。と、今しがた巡察から戻ってきたばかりらしい原田が、鬼のような形相で男らを睨みつけていた。
 わざとと思えるほどの足音を踏み鳴らし、原田がこちらへと歩いてくる。その間に、千鶴を囲んでいた3人の隊士らは浮き足立ち、どうしたものかと顔を見合わせる。その顔に浮かぶのは、明らかに怯えと後ろめたさだ。
「大丈夫か、雪村」
 男らの手前、常のように名前で呼ぶことはせずにしゃがみこんだ千鶴の顔をうかがう。そして千鶴が押さえていた箇所を確認しようと手を伸ばし、同時に千鶴があげた悲鳴からその傷が決して軽くないことを悟ると、底冷えするほどの視線と、声音を男らに向けた。
「何をやっていやがった」
「い、いえ、自分らはその、そいつに稽古をつけてやろうと」
「そ、そうです。いかに小姓とは言え、いざというときに剣も振るえないようでは武士の名折れ。お傍に置いている副長の名にも――」
「ごちゃごちゃうるっせえんだよ!」
 原田の怒号に、男たちだけでなく千鶴までもが震えた。恐らく自分の為に怒ってくれているのであろうが、その怒りの深さに対象ではないはずの自分までもが恐れを覚えるほど。
 当然、その怒りを直接向けられた隊士らの顔色は蒼白を通りこして真っ白だった。千鶴を打ちつけた男は木刀を持つ手をかたかたと震わせ、他の二人は、自分は関係ないということを訴えようと必死で視線をさまよわせる。
「屯所内での私闘は厳禁だ。新選組に籍を置くものなら、その鉄の掟を知らねえ訳ねえよな」
「そ、そんな私闘などと! 我らはただ、稽古をつけていただけだと申し上げたではないか!」
「そ、そうですよ原田さん! 大体何故親切心で稽古をつけた我らが責められねばならぬのですか。大体、この程度の稽古で怪我をするなど、そいつが弱い証拠――」
「へえ、そうか」
 千鶴にあわせ、落としていた腰を持ち上げて男らをねめつける。先ほどまでの激しい口調とは打って変わった、静かな静かな声で。
 原田の手が、千鶴の足元に転がっていた木刀をつま先で蹴り上げ、宙に舞ったそれを小気味良い音で掴み取る。片手で正眼に構え、千鶴を打ちつけた男の眉間にぴたりと切っ先をあてた。
「じゃあこいつに代わって礼を言ってやるよ。それと、代わりと言っちゃあなんだが、俺様が直々にあんたらに稽古をつけてやる」
 切れ長の目を更に細くし、原田が告げた言葉に今度こそ3人は声も顔の色も無くした。
「いいか、俺はこれから親切心であんたらに稽古をつけてやる。本気でな。その上であんたらがどんな怪我を負っても――なんだったっけか、ああ、『弱い証拠』……だったっけか?」
「ヒッ――」
 意図せず、隊士の歩が後退する。ゆらりと木刀に纏っている様が見える程の殺気は、決して軽口めいた口調と比例するものではない。
 ようやく痛みの波が落ち着いてきた千鶴は、このままではいけないと必死で右の手で原田の袴を掴んだ。
「原田さん、駄目です」
「おまえは黙ってろ」
 原田の低い声に気圧されかけたが、千鶴はぐっと堪えて言葉を続ける。
「駄目です。その人たちは、本当に私に稽古をつけてくださっただけです」
 端から見て、自分がどう見えるかなんてわかっていた。
 知らぬ間に現れた小僧が、幹部の傍をうろうろし、なにやら気に入られている様子で、かつ部屋まで与えられている。
 かと言えば命を張るような現場にはいない。
 日々、命を懸けて近藤や新選組の為に、志の為に動いている彼らから見たら、自分はなんと甘く見えることだろう。
 こちらにも事情はあるけれど、その事情を彼らは知らない。そう考えれば、こうなった事態も仕方が無いことだと思えるのだ。
 原田が苛立たしげに、もどかしげに自分を見る。けれど、千鶴は負けずにその視線を受け止めて頭を振った。
 未だ痺れる腕を押さえ、千鶴は立ち上がる。そして展開に着いてこられていない隊士たちに向き直ると軽く頭を下げた。
「ご指導ありがとうございました」
「――っ!」
 千鶴の行動がよほど予想外だったのか、隊士たちが怯む。それは原田も同じだった。
 すっかり戦意をなくし、且つ原田の眼前から去る口実が出来たとばかりに男達は去っていく。足音でそれを把握しながら、千鶴は暫く下げた頭を上げることが出来ないでいた。
 だってやはり、それでも悔しいのだ。
 頭では彼らの気持ちもわかって、だからこうすることが一番この場を納めるのにいいってわかっていた。それでも、好きでこんな立場にいるんじゃないとか、自分だって本当は、とか、色々言いたいことがあって、でもそのどれ一つだって言うことは許されなくて。
「千鶴……おまえ」
 そこまでする必要はねえだろうと、言いかけてやめる。千鶴を傷つけた男達への怒りは収まらないが、今は千鶴自身の方が心配だ。
「腕、見せてみな」
 先ほどの千鶴の反応からすると、もしかしたら骨までいっているかもしれないと思ったのだが、手に取った千鶴の左手首にそこまでの異常はない。それどころか、先ほどは触れただけで悲鳴をあげていたというのに、今では多少動かして感触を確かめても、肩をびくりと震わせる程度だ。
(ああそうか)
 これが、鬼と言われる所以。人にはない回復力。
 千鶴自身それに気付き、更に暗い気持ちが募る。自分の手を確かめていた原田からため息が漏れ、居たたまれなくて涙が零れそうになった。
 気持ち悪いと思っているに違いない。
 守り甲斐がないと、思っているに違いない。
(そんなの、わかってるから大丈夫)
「悪ぃ……おまえが自分が鬼だってこと、気にしてるって知ってたのにな」
 その言葉が決定打となり、涙が玉になる。だめだ、零しては駄目。
 自分が鬼なのは事実。それを頭で制御したって、心が不気味がるのは止められない。それが普通の人間の反応だから。
「いいんです……だって、私は鬼なんですもん。気にしないでくださ――」
「おまえが鬼でよかったって、思っちまった」
 続けられた言葉に、瞠目する。
 驚いて思わず顔をあげれば、心配そうな眼差しの奥にある安堵。それと、罪悪感。
 原田は千鶴の目に浮かぶ涙に気付き、思わず視線を逸らす。自分の責任ではないところで隊士に絡まれて怪我をし、更に自らの出生で傷ついている少女に、更に自分は追い討ちをかけていると思い込んで。
「おまえが鬼じゃなかったら、その怪我だってもっと酷ぇことになってた。けど、おまえが嫌うその血のおかげで、その程度で済んで……ごめんな、俺の自己満足だってわかってるんだけどよ」
 ひでぇ事言ってるよな、と、自嘲する原田に何が言えただろう。
(違うの?)
 鬼だから、気持ち悪いんじゃなくて。
 鬼だから、早く怪我が治って良かったって。
「う……うえ……」
「悪かった! 俺が悪かったから! ……泣くなよ」
 頼む、と。
 原田の太い腕が、千鶴の後頭部に回って自らの胸へと引き寄せた。
 ぼたばたと止まらぬ涙が、常にはだけられている原田の胸に零れる。雫はそのまま肌を辿り、巻いているさらしに染みて行く。原田は引き寄せた腕で、優しく千鶴の頭を撫でた。
「ほんと……すまねえ」
 心底申し訳なさそうな声に、千鶴はただ頭を振る。違う、そうではくて。
 自分は鬼なのに、どうしてそんなに優しくしてくださるんですか。
 気持ち悪がるでもなく、忌避するわけでもなく、いつもどおりに接してくれて、優しくしてくれて、挙句、鬼でも良かったって。
「ちが……だって、わた、私、鬼」
「だから悪かったって」
「そうじゃなくて、だって、鬼なのに、怪我だってすぐ治って、き、きもち……」
 ――気持ち悪くないんですか?
 言葉にすることすら痛くて口篭った続きを、原田は正確に理解し眉根を寄せる。そしてようやく千鶴が泣いている本当の理由に気付き、大仰にため息をついた。
「ばーか。おまえ、まだそんな事言ってんのかぁ?」
 細い肩は震え、小さな背中はすっかり丸まっている。まあ、こいつの性格ならそうだよなあと納得しつつも、どうしたら自分の気持ちを伝えられるだろう。
 人でも鬼だとしても。
 自分にとっては「千鶴」という存在が何者にも変え難いものであるということを。
「あのな千鶴。お前は女だ。人だとか鬼だとかなんてのは関係ねえ。お前は女で、女ってのは男に守られてりゃいいんだ」
 一度守りきれなかった自分が何を言うのかと言われても仕方ないけれど。
 それでも、どうしたって女は男が守るもので、千鶴は自分が守りたい。絶対に、譲れない。
「だから必要以上に自分を卑下したり、無理に我慢したりすんじゃねえ。いいか? 何かあったらすぐに俺に言え。今みたいなことも含めてだ」
 強く言い聞かせたところで千鶴は弱音を吐いたりしない。だから苛立たしい。だから――愛しい。
 思ったとおり応、の返事を明確に寄越さない千鶴に苦笑し、原田は腕を解く。そして再び千鶴の左手に触れ、未だ赤い跡の残るそれをそっと撫でた。
「冷やすか。あとは念のためにきつく縛っておいたほうがいい」
「あの、大丈夫です。じきに治りますから」
「阿呆。見てるこっちが痛ぇんだよ」
 こつりと拳で軽く小突き、すぐにまたその頭をくしゃくしゃに撫でた。
「痛かったろう。良く、我慢したな」
「いえ……いいえ」
「全くおまえは、本当に大した女だよ」
 反対の手を取り、屋敷の方へと歩き出す。そしてふと、千鶴の足が草履を履いていないことに気付いて今更ながらに驚きの声をあげた。
「っておまえ、なんで草履履いてねえんだよ!」
「あ、その、廊下を歩いている時に……」
 引き摺り下ろされました、などと言ったら、再び原田の怒りに火がつくことは明らかだ。そうしたらもう、どう止めたところで原田はあの3人を叩きのめしに行くだろう。
「歩いている時に?」
「え、と……」
 言わずとも分かった。が、どうやら千鶴は自分があの隊士らにやり返すことを良しとしていないらしい。それが分かるから、原田はもうただただため息をつくしかない。
 短気で、やりたいようにやる自分がここまで我慢している時点で、もう少し千鶴が何かに気付いてくれるとせめて報われるのだが、その兆しも一向に見えないことから余計にため息が出る。
「あーったく、仕方ねえなあ!」
「原田さ……きゃああっ!」
 やるせなさをぶつけるように、原田が千鶴の身体を横抱きに持ち上げた。大義名分は勿論千鶴の足を思ってだが、本音は無論別のところ。
 じたばたと暴れる千鶴を簡単に押さえ込んで歩き出す。顔を真っ赤にして慌てる少女が、たまらなく愛しい。
「原田さん降ろしてください! 私、自分で歩けますから!」
「ばーか。誰が離すかよ」
 原田の微妙な言い回しに気付くことも無く、千鶴はただただ頬を赤く染める。こりゃあもう長期戦だな、と、やはり短気な自分らしくない考えに苦笑しつつ、そんな自分も面白いかもしれないと原田は上機嫌に笑った。






Fin
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Comment:


左之さんの「女の子扱い」には非常に照れました。
そしてあの怒涛の展開に非常に照れました。女子であることを死ぬほど良かったと思わせてくれたルート笑

千鶴の回復力については、全員「鬼」でよかったと思うだろうけれど、口にするかしないかが各々違う気がします。
で、左之さんの場合は、そこに関しては思っていること全部ぶつけて、逆に無意識のうちに千鶴を安心させてあげることが出来る人じゃないのかなと。



20090206up



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