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●拍手再掲 |
こんな気持ちは誰も教えてなんかくれなかった。
痛くて苦しくて。息をすることすら満足に出来ない。
前までは、それならそれでいいと思ってた。例えば息が出来なくて死んでしまっても、それならそれで仕方ないと思える程度の『生』でしかなかった。
なのに。
「チドリ?」
いつもと変わらず、痛いくらいにまっすぐな眼差しで私を見る人が、憎らしくて、恨めしくて。
どうして私がこんなにもアナタのせいで苦しい思いをしているのに、なんでアナタはいつもどおりなの? 全然、普通なの?
「なあ、どうしたんだよ。なんかおかしいぜ、今日――」
「さわんないで」
短い拒絶に彼の――順平の肩が傍目にも分かるほど震えた。どこか傷ついたような瞳を見ることが出来て、やっと自分と同じ苦しみを少しは彼も感じたのかと思うと少しすっとして、凄く苦しくなった。
笑ってて欲しい。笑ってる順平の顔がすき。
なのに、それが苦しい。
私の名前を読んでくれる声がすき。順平の声が、私の名前を紡ぐのがすき。しあわせに、なる。
なのに、それが苦しくて。
私にこんな苦しみを運んでくる彼が憎くて。
彼がいなくなりさえすれば、こんな苦しみから解放されるかと思ったのに。
誰も訪れなくなった病室は静か。
だけど、私の心の中は順平がいなくなるまえよりもざわざわする。なに、コレ。
「苦しい……いたいよ」
手首を切る痛みなんかとは違う。内側からじくじくと得体のしれない怖いものが広がっていく感じ。
順平、なにしたの。私になにしたの?
「教えてよ……順平」
会いたい。会いたくない。
会いたくない会いたくない会いたくない――会いたい。
「……いや」
何も求めない。期待なんかしない。そんなことをしたら最後、全てのことが怖くなる。そうしたら私、もう生きてなんかいけない。
本当は、その時に気付けたら良かった。
もう生きてなんかいけない、と思った時点で、自分がそうすることを望んでるってことに。
もう、そう思わなかった頃になんて、戻れないってことに。
何も知らずに育った私は、初めて知った順平が教えてくれた『怯え』がただ怖くて。
カードを裏返せるチャンスを自ら手放したことに気付いたのは、全てが遅すぎたあとだった。
Fin
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Comment:
拍手再掲。
P3本命CPはずんチドなんです。超ストライクです。大好きだ!
(20070603)
20071101再掲
*Back*
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